オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 16 第一章・ライブの再開(1) 

 一睡もしないで朝になってしまった。けれども、田島も花園も、久しぶりに一緒に飲んで話した気分は悪くなかった。

「花園、来てくれてサンキュ」

 帰りがけ、田島は花園を玄関まで送る。田島の表情は、花園が夕べのど飴を持参してやって来たときとは全く変わっていた。明るさを取り戻した田島の声にも、花園はひと安心する。

「今日も会社説明会とかあるのか?」
「もちろん。俺はマジ就活中だから」
「だよね。途中で寝るなよ」
「人の心配より、ガキはちゃんと寝ろよ。寝る子は育つだから」
「はいはい」
「あとお前・・・大学に来い」

 田島のリアクションには期待せず、花園は「じゃ」と田島の肩をポンポンと軽く叩くと、玄関から出て行った。

 花園が帰った後、田島はドサッとベッドに身を投げ、仰向けになる。

 瞬。俺を許してくれるか。

 心の中で問いかけ、少しだけと目を閉じる。けれどもそうした途端に、夕べ花園に言われたことや、高校時代の色々なことなどを思い出す余裕もなく、田島は眠りに落ちた。

 目が覚めたとき、時間は昼をとっくに過ぎていた。気分は悪くなかったけれども、酷く空腹だった。さっとシャワーを浴びて、アパートからそう遠くないカフェに出かける。

「マスター、ランチまだ良い?」
「ランチ? 田島君、朝飯くれ、って顔してるけど?」

 それって、どんな顔? という表情で、田島は首を傾げる。

「どうしたのその目。夕べ花園君と飲みすぎたんじゃない?」

 花園の前で泣きはらした田島の目が、まだ白ウサギのように真っ赤なままなのにマスターが驚く。

「どうしてそれ、知ってるんですか?」
「今朝、花園君がここ来てトーストだけ食べて行ったよ。ついでにシャワーも浴びて、俺の一張羅のスーツもひったくって行った」

 聞くと、田島のユニットを後にした花園は、マスターを呼び出し、開店前のカフェに寄っていったらしい。

「スーツ、サイズ合ったんですか?」
「いや全然。花園君は細いからね。ま、無いよりは良いって、着て行ったよ。相変わらず忙しそうだったね」

 開店前の店を開けて、元バイトの面倒を見てやるなんて、このマスターの許容の広さにも驚かされる。花園がここのバイトをやめてからも、就活で忙しくしていても、良く顔を出している理由が何となくわかるような気がした。

「俺も明日から忙しくなりますよ」
「へえ、田島君もやっと就活始めるんだ」
「いや、明日からビシッと大学に行くんです」

 腹ごしらえの後、田島は東横線で渋谷に行った。何年か振りに楽器屋に行って、ギターの弦を新しく買い揃えた。

 ユニットに戻ると、昨日からそこにあるギターが目に入る。再びケースから取り出し、買ってきたばかりの新しい弦を張ると両腕で抱えた。

「何だっけ?」

 チューニングをしてから弾き始めたのは、夕べ花園に「弾いてくれ」と頼まれた時に「忘れた」と言ってやらなかった曲。

 それは『バンド甲子園』で優勝した時の演奏曲。その曲こそ、田島たちのバンドのデビュー曲になるはずのものだった。

「ひでえ。こんなんじゃ、ライブとか全然無理」

 一人苦笑を浮かべ、再び弾き始める。しんとした部屋の中を、覚えのある音楽が流れていく。

 また一緒に・・・瞬。

 ピックで音を弾く(はじく)たびに、田島は心の中に何かが少しづつ注がれ、満ちていくのを感じていた。



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 とりあえず、ここで田島の悶々の日々は一段落です。
 この先、何をどう決断するんですかね。 


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - fate  

Title - 視界が開けて明るくなりましたね!

「お前、やんちゃなクソガキのくせに、友だちには恵まれているな」
「やんちゃなクソガキだからだよ」

すみません、いきなりです。ここに食いつきました(^^;
こ…、これはっ、まさにfateのことを言われているっ???
と思わず、びっくりしました!!!

そうなんです、最近、fateはクソガキっぽくて、いろんな方にクソガキ扱いされております(・・;
まぁ、一番、強烈なのは約一名(別サイト)ですが(--;
そして、周りに恵まれている、というのがもっとその通りです!
このブログのサイトでも、別サイトでも、とにかくfateはお知り合いになった方に大変恵まれている。
ああ、それはきっとfateがクソガキだから、皆さん、仕方ねェな、と温かい目で見てくださっているからなんだ!!!
と確信に至った次第です!

だけど、(ここでクソガキ話題は終了!)田島くん、本当に良かった。
音楽は、やはり人を救うものであり、世界各国共通の言語ですね。
そして、喫茶店のマスター!
おお! 偉大なるマスター!
こういう人物って何気に世界を温かくしてくれますね!
大好きです、この設定!(つまりfateも使っている…)
行き詰るとマスター出現!(←これはfateの常套手段!)

今後が楽しみです(^^)
またお邪魔させてください~


2011.11.01 Tue 11:48
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: 視界が開けて明るくなりましたね!

fateさん、コメントありがとうございます。

おぉ~! fateさんはクソガキ系なのですか。
若くていらっしゃる^^

食いついていただいて、どもどもです。
fateさん、いつまでもかわいいクソガキキャラでお願いしますね。

田島の悶々が徹さんによってやっと解かれました。
(ここまで長かった・・・)
これからやっと外に出て行きます。

マスターとは、徹さんつながりなのですが、
これからめっちゃ絡んできます。
要チェックお願いしますね。

また遊びにいらしてください~
2011.11.01 Tue 12:46
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

大学に行く!!
・・・それは結構重要なミッションですね。
単位を取って、ちゃんと卒業しないとリアルの生活もうるおいませんからね。。。

バンドと大学の両立!!
頑張れ!!
(*ノωノ)
2016.02.20 Sat 10:43
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

良かった・・・今回は応援がいただけた・・・ほ。

そうそう。大学に行きますよ。
遅ればせながら、田島、心を入れ替えます。(ホント遅いんだけど -_-;)

目先のミッションは、単位をきっちり取って、卒業する、です。
頑張らせます。はい。徹さんが。(←あれれー ^^;)
2016.02.20 Sat 16:33
Edit | Reply |  

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