オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 18 第一章・ライブの再開(3) 

 カフェのディナータイムは週に一度。六時からパブモードとなり、ビールやワイン、カクテルなども出される。

「えっと、はじめまして。田島祥吾です」

 今日はマスターが宣伝しただけあって、店の常連客が集まっていた。花園もゼミの仲間に声をかけていて、何人かが駆けつけていた。

 カフェ内の照明は少し落とされ、田島の立つコーナーだけスポットが明るく照らされている。

「ここでライブをやらせてもらえるのは、マスターつながりって事で。じゃ、どんどん行きます」

 オープニングで誰もが知っているポップソングを一曲歌い、名まえだけの自己紹介をすると、すぐに次の曲に入った。それから田島は、ほとんどMC無しで、次から次へと曲を演奏していく。

 花園は、彼女の三条を連れてこのライブに来ていた。一曲目が始まり、軽快にギターを弾く田島を初めて見た時、花園は腹の底から身震いするのを感じた。

 友だちとして親しい付き合いがあるものの、自分の知らない田島がそこにいた。しかも、それが本当の田島の姿なのかと思うと、何だか信じられない。

 ライブ初回ということもあってか、ノリの良いヒット曲がずらりとリストに並ぶ。客の反応もとても良い。

 田島は、長谷川の形見のギターを弾いていた。花園が初めてそれを見せてもらったときは、弦が切れていて手入れもされていなかった。

 けれども、今日はボディーも綺麗に磨かれ、キラキラとスポットライトの光を反射していた。そのボディーから流れる音も、良く響いている。

「イエーイ!」

 花園と三条は、大学の仲間と一緒に近くのテーブル席から田島のライブを見守り、盛り上げる。初めて見る田島のライブに視線が釘付けとなり、目が離せなかった。

 曲目自体は、田島がいつもカラオケで歌っているものが多かった。けれども、田島はギターを自在に操り、歌もカラオケとは全くアレンジを変えていた。

 一曲一曲を、まるで自分の持ち歌のように歌う田島を見て、ほんの一週間くらいでよくそのように歌を仕上げてきたものだと花園は正直驚く。

 これが高校時代、自分のバンドを『バンド甲子園』で優勝させた田島の力の一部なのだろうかと思うと、番組の中で輝いていた頃の田島の姿と、今、目の前で演奏している田島の姿とが花園の目の中で重なって見えた。



 カフェのカウンターでは、マスターが常連客の三宅と向き合っていた。三宅があからさまに田島を指差して言う。

「マスター、あれ、すっごく良いね」
「うん、良いでしょう。なんてね。僕も今夜、初めて見るんだけど」

 ライブが始まってからずっと、三宅は鋭く睨みつけるような視線を田島に向けていた。

「どうやって見つけたの?」
「見つけた、って言うか・・・三宅さんも知ってる花園君の友だちで、前からうちにも良く来ていたんだよね」

 以前このカフェでバイトをしていた花園のことは、三宅も良く知っている。

「へえ、花園君の知り合いだったんだ。『バンド甲子園』の祥吾でしょ」
「さすが三宅さん、鋭いね。でも、こんなに凄いとまでは知らなかったよ」
「俺も一応、業界にいるからさ。すぐにわかった」

 三宅は、渋谷にオフィスを構えるカメラマンで、業界で手広く仕事をしている。自宅がカフェのすぐ近くらしく、仕事帰りや休みの日などによく寄る。

「けど、何年振り? 『バンド甲子園』の時は確か高三だったでしょう。当時はスーパー高校生だったよね」
「今はそこの大学の学生だよ」

 田島と花園の通う大学は、カフェから五分と離れていないところにある。わざわざ大学名を言わなくても、三宅にはわかる。

「そうなんだ。大学でもやってたのかな。全然ブランクを感じさせないね」
「いや、花園君の話しによると、何もしていなかったみたいだよ。今日が高校以来の初ライブだって」
「へえ、信じられないね。人を惹きつけるステージングのうまさが全然変わってない。アレンジの仕方も凄く良いね。俺が音楽の方の知り合いに知らせたら、すぐにでも引っ張っていかれると思うよ」

 それを聞くと、マスターは慌てた。

「だめだめ。今はそっとしておいてあげて」
「え、何で? ワケあり?」
「うん。大あり」
「どんな?」
「ウサギになった」
「は? それじゃわかんないよ、マスター」

 実はマスターは、花園から大体の話を聞いていた。ずっ胸に抱えていたものを放ち、やっと動き出した田島。その田島の心情を考えると、マスターはこのライブを大げさに宣伝するつもりはなかったのだ。

「とにかくさ、今はここで平和にライブをさせてあげたいんだよね。だから、三宅さんの業界の人には内緒ね。見つけたとか、絶対に言わないでよ」
「理由が知りたいところだけど。ま、聞かないでおくよ」
「花園君が、やっとここまで持ってきた、ってだけ、特別に教えてあげる」
「友だちの後押しか。ギターの瞬の事故とも絡んでる?」
「三宅さん、それ知ってるんだったら、ホント何も言わないでよ」

 マスターは「シー」と、人差し指を口に当てた。

「ふーん。じゃあ、しばらくは俺だけの楽しみにしとくか」
「そうそう。よろしくね」

 人気テレビ番組だった『バンド甲子園』で優勝したバンドに事故が起こり、デビューせずに消えていった。それは当時の音楽業界だけでなく、社会的にも大きなゴシップの一つとなり、当時のワイドショーなどを賑わせた。

 それから数年たった今、そのバンドのボーカルがまた活動を始めたのだ。その話題は、掘り出し物になる可能性もある。
 
 三宅は一瞬そう思ったのだけれども、マスターの様子から、今はまだ掘り出すべきではないのかもしれないと理解した。

「だけどこれ、すぐに見つかるんじゃないかなあ。祥吾の歌は、ホント人を惹きつけるんだよね」

 そうなった時に、自分のことを疑わないようにと三宅は念を押すと、再び田島のライブに目を向けた。



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 田島、復活・始動です。とりあえず、スタートは順調?
 まだ、コピーのみですが(^^;)


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - LandM  

Title - No title

ようやく戻ってきたみたいな感じですね。
自分の表現しているものをどこで公表するかにもよりますけど、それを見せることはとてもいいことですよね。私も小説家にはなれなかったですけど、アルバイトでゲームのシナリオライターやったりしましたしね。どう進むかわからないものですからね。
2011.11.05 Sat 07:54
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

はい。ようやく戻ってきました(笑)

LandMさん、ゲームのシナリオライターって・・・すごいですね。
メディア系のお仕事、ちょっと憧れます。

どんな形にせよ。自分を表現することは大事で、
その場があるってとても良いことですよね。

それが自分が意図したものと違っていたとしてもそれも良しということで。
チャンスはどこにでもあって、それを自分がどう拾うかどうかにもよると思います。
2011.11.05 Sat 09:23
Edit | Reply |  

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