オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

夢叶 19 第一章・ライブの再開(4) 

「皆さん、今日はカフェに来てくださって、本当にありがとうございます!」

 店のコーナーで展開されていた田島のライブも終盤を迎えていた。

「オーナーのマスターが宣伝してくれたお陰で、今日はお客さんもいつもより多いみたいなんで・・・おい、そこの元バイト! メシ食い終わったら店手伝えよ」

 急に話が自分に振られたのに焦り、花園は飲んでいたドリンクをこぼしそうになりながら答えを返した。

「こっちは心配するな。そっちでちゃんと歌ってろ!」

 花園が元バイトであることは、今日集まっている常連客も承知だ。アットホームな笑いでわっと盛り上がる。田島は最後の曲を披露した後で、数曲アンコールに応え、無事に初ライブを終了した。



 最後の客が帰り、マスターがいつもより少し遅めに店を閉める。花園と三条も残って、店の片づけを手伝った。

「田島君、今日はお疲れ。凄く良かったよ」
「サンキュー、マスター」
「軽く田島君の初ライブの打ち上げをしようよ」

 そう言うとマスターは、花園や三条にもビールを出し、カウンターで乾杯した。

「マスターも、今日は忙しかったでしょ」
「おかげで、ちょっぴり売り上げが上がった」

 マスターが目を細める。確かに今日は客が多かった分、マスターは忙しくて動きっぱなしだった。けれども、それ以上に田島のライブに感動して、まだ余韻に浸っていた。

「三条さん、今日のライブどうだった?」
「すっげー良かったよ」
「三条さんに聞いてるんだけど?」

 田島は、横から機嫌良く割り込んできた花園に、線目で「お前には聞いてない」という視線を流す。

「凄く良かったです。田島さん、ライトの下でキラキラしていましたよ」
「キラキラ?」
「うん。田島君の歌、ホント良かった」

 三条は田島に満面の笑顔を見せ、マスターはビールをぐいと飲み、リラックスする。

「ギターはどうでした?」
「ギターも最高だよ。すっごく上手いね」

 マスターの褒め言葉に、田島も頬を緩める。毎日のバイトが終わった後、田島は深夜に睡眠時間を削ってギターの練習をした。そんなに集中してギターの練習をしたのは、高校卒業以来だった。

「アレンジも良かったよ」
「そっちは瞬の受け売りかな」

 とはいうものの、ほんの一週間足らずでヒット曲にアレンジを加え、それを演奏し、披露する力量を持つ田島にマスターも花園も感心する。

「そのうち、お前が作ったオリジナルもやるんだろ」
「いや、昔のはやらない」

 花園の問いに対して、田島は即答する。

「どうして?」
「忘れた、って言っただろ。オリジナルは、新しいのをやるから。できたらお前に一番に聞かせてやるよ。そういう約束しただろ」

 田島は、花園に曲を作ると言った。出来上がるのがいつになるのかは田島次第だけれども、それがいつか自分のもとに来るのかと思うと、花園は期待せずにはいられない。

「オリジナル、良いねえ。で、それ、いつできるの?」

 マスターも興奮して、身を乗り出す。

「まだまだですよ。しばらくはコピーやって、感覚を思い出してから」

 田島には、確かにブランクがある。ギターをやめ、創作をやめていたところで、急に新しいものができるわけではない。

「今は、自分ができることを少しづつしていこうと思う。とりあえずは、ここで・・・マスター、あんな感じで良ければ、これからもここでライブをやらせてもらって良いですかね」
「何言ってるんだよ。田島君のライブは最高。ずっとやってよ」

 マスターが、笑顔で声をあげる。始めは花園から話を聞いて、ふと思いつきで軽く田島に頼んだつもりだった。けれども、店で展開された今夜の田島のライブには、想像以上の驚きと感動があった。

「マイペースで良いんじゃね」
「うん。昔のことを思い出して、何をしていたかとか、何をしたかったのかとかいうのを考え直す。それが最初にすること。初心に戻るって言うのかな。しばらくは、自分の思ってることを整理するのに、時間をかけたいと思ってる」

 自分に言い聞かせるように田島が語る。その表情も口調も、ついこの間まで何を考えているのかわからなかった田島とは、別人のように違っていた。

「金貯めて、新しいギターも買う。もう一度、夢見てみるよ」

 田島が初めて語った「夢」の話を、花園は自分のことのようにワクワクして聞いていた。

「マスター、田島の夢を叶えてやるために、出演料、奮発しなきゃ」
「そうだね」
「いやいや、マスター、いらないっすよ。ここではやらせてもらうんで。やるの、カバーだし」
「まあまあ、それについては僕に任せて。とりあえずは、来週も今日みたいな感じで、よろしくね」
「そうだ、来週」

 来週はどうするのかと、期待の込められた三人の目が田島に向かう。

「来週は・・・また練習しなくちゃです」
「なに、内緒ってこと?」
「違いますよ。そんなんじゃないっす」
「やばいマスター、俺、来週からしばらく来られない」

 花園の就職活動は、まだ終わっていない。何かと予定があった。

「大丈夫。僕がウサギの面倒はちゃんと見るから」
「何それ、マスター?」
「随分でかいウサギですけど、マスター、一人で大丈夫?」
「泣かせなきゃ、大丈夫でしょ」
「もう、またそこで義兄弟しないでよ」

 花園がどこまでマスターに話をしたのか、少しだけ田島は気になる。けれども、二人とも「ちょっとだけ」と言っては、顔を見合わせてニヤニヤと笑うだけだった。



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 やっと、田島の「夢」が動き始めました。ここまでが長ーい。っとに(><)


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - 西幻響子  

Title - No title

もしかして、三宅さんがしゃべっちゃったかな?
田島くん、うまく対応できるかなぁ…。

それにしてもいいですねー、このカフェにいる時のみんなの雰囲気。
とても幸せそうで ^^
2011.09.20 Tue 11:58
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - こんばんは

夢叶、更新に追いつきました^^
等身大で誠実な男の子たちの想いが、丁寧に書かれていますね。
とても好感が持てます。
友達想いなのに、なぜか邪険にされてしまう花園君が可愛いです。
田島くん、夢が叶っていくといいですね。
また、お邪魔します。
2011.09.20 Tue 19:07
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: No title

> 西幻響子さん

コメントありがとうございます。

田島はやるだけなんで良いのですが、マスターの方が対応が大変で・・・

カフェではみんな仲良しです。マスターの人柄によるところかな。
2011.09.20 Tue 20:01
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: こんばんは

> limeさん

コメントありがとうございます。
それから、ここまで読んでくださってありがとうございます。

やつら、誠実ですかね。ありがとうごさいます。
素直で正直に、と思って描いている、、、つもりでありますです。。。

邪険にされようがされまいが、構わずにサポートしてくれるのが徹さんです。
良い仲間に囲まれて、田島の夢はどうなっていくのかな・・・

是非是非またお越しくださいね。
2011.09.20 Tue 20:23
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

昔取った杵柄・・・。。。
というわけではないのでしょうけど。
意外に小さいころ。
もとい、青春期までのやったことというのは、身体でも覚えているもので。今でもできたりするから不思議ですよね。
田島くんもそういうことができるのはやはり小さい頃というか今より若い頃の努力の賜物なんだと思いますね。
(*'▽')
2016.03.05 Sat 14:40
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

そうですね。身体は覚えている。ですね。
田島は高校時代に親友にかなり鍛えられました。
そこで身につけたものはそう簡単に忘れるものではないですね。
若いうちにいろいろやっておくものですね(^^;)
2016.03.05 Sat 20:14
Edit | Reply |  

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