オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 21 第一章・ライブの再開(6) 

 それから1時間もせずに、花園がカフェにやってきた。駅から走って来たのか息を切らしていた。

「マスター、今日のライブで何かあったんですか?」
「もう、大変だったんだから。僕一人で死ぬかと思った」
「ウサギに何があったんですか!?」
「いや、ウサギは最高だったんだけどね」

 来週のライブに備えて、すぐに準備をする必要があった。

「花園君、ホームページの編集の仕方教えて」

 カフェのサイトは、花園がバイトをしていた時に、カフェの宣伝のためという軽い気持ちで簡単に作ったものだった。けれども、花園がバイトをやめてからは更新もなく、放置状態になっていた。

「来週のライブから、オンラインで完全予約にしたいんだけど」

 マスターは、数日前からこれを考えていた。今週中ずっと、店には田島のライブについての問い合わせが多く寄せられ、対応に忙しかったからだ。

 マスターと花園が、カウンター裏のオフィスの片隅にあるPCの前に並んで座り、久しぶりにサイトを開く。

 今日のライブで、客から来週のことを何度も聞かれたマスターは、情報はホームページを見て欲しい、と何度も繰り返し説明していた。

「花園君、今日来てくれて助かったよ」

 花園は、早速サイトの改編を始めた。花園は、ICTの分野に詳しいわけではないが、それでも既製のフォーマットを利用できるくらいの基本的な知識は持っている。

「田島のプロフィールとか、どうします?」
「某大学生で良いんじゃない?」
「そうですね。一応、まだアマチュアだし」
「テクニックは、プロ並みだけどね」

 この小さなローカルのカフェで田島のライブを運営するためには、サイトを大きく改造しなければならない。マスターは、ホームページを立ち上げてくれた花園から、教わることがたくさんあった。

 花園は段階を踏んで、マスターのリクエスト通りにシステムを組んでいった。とりあえず、オンラインでライブの予約ができるようにして、リクエストのコーナーも作った。

「あいつ、一度はプロになりかけてるんですよね。何か嘘みたいだけど」
「そんなこと言ったら、田島君、どこかでくしゃみでもしてるかもよ」
「もうこんな時間じゃ、寝てるでしょ」

 結局、作業は夜中までかかってしまった。けれども、リニューアルと銘打って新しくなったホームページの出来上がりには、マスターも花園も満足した。

「俺、バイトに復活しましょうか?」
「マジ? それ助かるよ」
「就活もだいぶ落ち着いたんで、とりあえずライブの日だけ、って事で」
「やった。じゃあ僕、早速リクエストしちゃおうかな、匿名で」

 次の日、花園は田島に、カフェのホームページのアドレスをメールで送った。

『90年代のJ-POPを練習しとけ。マスターからのリクエスト』



 その週、田島の90年代J-POPをカバーしたライブは完璧だった。マスターは涙を流すほど喜んで仕事にならず、バイトに復帰した花園が店を仕切っていた。

「マスター、仕事して。あそこにチキン入ってるから、ちゃんと見ててくださいよ」

 そう言って、花園はキッチンのオーブンを指差す。けれども、花園の声が耳に入っているのかいないのか、マスターは田島のギターのリズムに合わせて体を揺らすばかりだ。

「ったく。田島が凄すぎて、今日はマスターが使い物にならねえ」

 そうぼやく花園も、田島の演奏に目をやっては、しばし手が止まっていた。

「田島君、お疲れ!」
「マスター、今日のライブどうだった?」
「すっげー良かったよ」
「マスターに聞いてるんだけど? リクエストしてくれたから」

 田島に線目を流されるのはいつも花園。

「泣けるよ~、感動!」
「良かった。マスターのために、めちゃくちゃ練習したから」

 マスターと田島の二人だけで妙に盛り上がり、花園が口を尖らす。

「来週は俺がヘビメタをリクエストしてやる」
「アコギじゃ無理」
「どーしてさ」
「花園君、拗ねないで、ね」

 それからのライブは、マスターのアイデアで週ごとにロック・ナイト、バラード・ナイト、女性ボーカリスト・ナイト、などのようにテーマがつけられた。
 
 完全予約制により、カフェのホームページがうまく活用され、毎週すぐに予約がいっぱいの好評を博した。

 ライブで田島は、カバーしかやらない。けれども、その演奏と歌は、原曲を尊重しつつも大胆にアレンジしたアコースティックなサウンドで、まるで自身のオリジナルを披露しているかのようだった。

 田島はカフェライブの他に、新しいギターを買うという目的のために、毎日バイトにも通った。こうして田島は、深夜にギターの練習をするのも含めて、忙しくも充実した大学3年の春休みを過ごした。



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 マスター、仕事しようよ(笑)  
 田島が凄いのは、練習してるから。

 第一章 (大学三年・引きずる過去)、終了です。
 第二章 (大学四年・カフェライブ) につづく。


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - 西幻響子  

Title - No title

わーい。やっぱり花園くんでしたね。
それにしても彼、頼もしい。
マスターは手放せないかんじですね ^^
田島くんも、忙しくなりそうだー。
この「夢叶」を読んでいると、なぜか楽しい気分になってきます。
2011.09.25 Sun 14:21
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: No title

> 西幻響子さん

はい! 大当たりです。
徹さんは良くできる人なんで・・・
マスターとはいつの間にか義兄弟らしい(?)

田島はちょっと身の回りが騒々しくなるみたいですよー(予定)

お話を楽しんでいただいているようで、嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします^^
2011.09.25 Sun 16:50
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

花園君、頼りになりますね^^PCに強い人は、かっこいい♪
田島君、いろんな人に応援してもらって、幸せですね。
これも、ひたむきな田島君の人徳かな。

ここでは、ゆっくり時間が流れてるような感じがして、落ち着きます。
2011.09.26 Mon 00:01
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: No title

> limeさん、コメントありがとうございます。

徹さんは信頼度高いです。マスターも実は只者ではない、かも(笑)

田島は強力なサポーターに囲まれて、良い環境の中にいますね。幸せ者です。

カフェにいる間はのんびりと過ごせますよう・・・
2011.09.26 Mon 09:06
Edit | Reply |  

Name - fate  

Title - すごい!

まぁ、知名度もあったんだろうけど、やはり才能、センスというか、何かきらめくものがあったんだろうな、田島くん。
とりあえず、良かった!
とても! 良かった!

ちなみに、fateは喫茶店経営にちょっくら食いついてしまいました。
実はやりたかった。
喫茶店!
田島くんをレンタルすれば客入り間違いなし! と分かったので、密かに拉致って…
なんどと妄想を膨らませつつ。

マスター、良い人だね~
それから、やはり友情というか、人間愛というか、世の中まだ捨てたもんじゃない…的な至福感。

花園くん、バイト復活ですな。
楽しみです!

2011.11.04 Fri 10:52
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: すごい!

fateさん、コメントありがとうございます。

田島の夢はまだスタートしたばかり。
見守ってあげてください。。。

fateママの喫茶店経営、面白そうですね。いつかやってください。
ちなみに、田島が拉致られた場合、どんな展開に?
興味深々・・・(笑)

マスターは、めっちゃ良い人です。
こんな人が付いてくれたから、田島も安心です。

徹さんとマスターとでがっちり田島をサポートします。
何て幸せな奴・・・
2011.11.04 Fri 14:13
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

最近は時代が多様化しているので、プロとアマの協会が微妙ですけどね。デジタル化してますから、企業を介さなくても音楽は出せますしね。
色々便利になってきた時代ですよね。
その分、本当に実力と努力と需要と供給を考えて出さないといけないですからね。
2011.11.30 Wed 09:07
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

そうですね。
色々な分野で、いわゆるアマの方が限りなくプロに近くて、でもプロじゃなくて、
趣味、なんて言われて、びっくり、ってことが多々あります。。。

そうそう。デジタル化はホントすばらしい! と思います。
便利な世の中で、出すほうも、出されるほうも、
本質を見極める力が問われていると思います。

きびし~・・・見失わないように・・・
2011.11.30 Wed 17:01
Edit | Reply |  

Name - 大海彩洋  

Title - ライブデヴューしましたね

喫茶店でライブも素敵ですね(^^)
そしてデヴューの光景が、とても良かったです。
しかもそこで広がる人間関係って、あるいはついてくれるファンの人って、多分プロになってからとはずいぶん違うんだろうな。
きっと田島くんは簡単に有名になっちゃわないで、こういう小さな横のつながりをいつまでも大事にするミュージシャンになってくれるのだろうと、思います。
それにしても、マスターも花園君も、みんないい人だなぁ。
こういう悪意のない協力者、本当に貴重ですし、これからも大事にしてほしいなぁと思いました。
もっと読み進むつもりが、あれこれしてたら眠くなってしまって、また栞がわりにコメント、はさんじゃいました^^;
やっぱり会話が詳細でリアルなのがいいですね。
2013.08.19 Mon 07:23
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: ライブデヴューしましたね

大海彩洋さん、コメントありがとうございます。

デヴューといっても、カバーでギャラ無しで喫茶店です。
今の田島にはこれで十分に恵まれています。

聴いてくれる人が、まだまだ店の常連や大学の友達などで、アットホームな感じですかね。
カフェなので、あまり大げさになるとマスターが困る(^^;)

> きっと田島くんは簡単に有名になっちゃわないで、こういう小さな横のつながりをいつまでも大事にするミュージシャンになってくれるのだろうと、思います。

大海さん、良いこと言いますねえ。
こういう小さなつながりを大事に積み上げることが、とてつもなく大きなことにつながる(似たよなこと by イチロー)と良いなあ。

うん。大海さんを寝かさず、引き止められるような文章が書けるようになりたいものです。
いつになるのやらぁ~~(-_-;)
また栞を進めにお越しください^^
2013.08.19 Mon 17:06
Edit | Reply |  

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