オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 23 第二章・大学四年(2) 

 田島の「自分のバンド」という言葉にケンドリは目を丸くし、横にいた花園も一瞬耳を傾ける。

「え? 祥吾さん、バンドやってるんですか。カフェ以外で?」

 それには答えず、田島はケンドリの肩をポンポンと軽く叩いてから手を離した。

「夢が叶うように、頑張って」

 田島はそう言って目を細めると、「じゃ」とケンドリに向かってくるりと背を向けた。田島からチラ見された花園も我に返ったように後を追い、二人は肩を並べて青年のもとから去っていった。

 ふと花園が振り返ると、後に残されたケンドリが、勇気を出して好きな人に告白したのに、あっさりと振られてしまった高校生のように呆然と立っていた。小さな体に背負ったギターがずんと重くなるのを感じていたに違いない。

「田島、さっきの・・・」

 花園は、青年の前で田島の口にしたことが、どういう意味なのかを確かめたかった。けれども、田島はその問いをさえぎる。

「お前も就職が決まったなら、またバイトでもするのか」

 田島は、誰とも会わなかった、何事もなかった、そんな口調で話題を変えてきた。花園は小さく溜息をついて、田島に合わせる。

「俺は渋谷の居酒屋に戻るよ。もう店長には話してある」
「相変わらずやることが早いな。三条さんとデートの費用も稼がなくちゃだしな」
「余計なお世話」
「今度は店で喧嘩すんなよ」
「俺が喧嘩したんじゃないし」

 大学のメインビルディングの前まで来ると、田島は「去年落として今年再履修しているビジネスの講義に出る」と言って、小走りに行ってしまった。

「お前のせいで遅刻だ」と文句を言って去っていった田島の後姿を見送りながら、花園はつぶやく。

「俺のせいじゃなくて、さっきのあいつのせいだろう」

 田島がケンドリに言った「自分のバンド」という言葉がどうも気になる。けれども、いつもの田島のペースにのまれて何も聞き出せなかった自分に、少しがっかりする花園だった。



 田島の時間割は、再履修の科目で詰まっていて、大学四年だというのに空き時間がほとんどなかった。

 大学が終わるとバイトに直行していたので、家で勉強する時間がない。だから、課題なども講義の時間内にできるだけやるようにと集中した。

 勉強とバイトで忙しく日々を送っているうちに、気が付くと大学の前半期終了の時期になっていた。

「いつから田島のライブ再開するんだ?」

 田島はゼミの仲間と前期終了の打ち上げに来ていた。試験もすべて終わり、もう夏休みに入ったようなものだ。

 大学の友人たちと飲むのは久しぶりだった。夏休み中は帰省する友人も多い。だから、今夜はバイトを休んで、この飲み会に顔を出していた。

 カフェライブのほうは、大学の勉強とバイトが忙しいという理由で六月・七月と休んでいた。けれども、マスターと連絡を取り次第、すぐにでも再開する予定でいる。

 花園からは、居酒屋のバイトが休めなくて来られないとメールが来ていた。

「花園は彼女とデートだよ。ったく、打ち上げに来ないなんてな。田島、たまには俺たちにも付き合え」

 ゼミの仲間はそれぞれに就職先も決まっていて、夏休みを前にリラックスしている。就職が決まっていないのは田島一人だけだったけれども、みんな田島が就職しないのを知っていたし、一度はカフェのライブに来て応援もしてくれていた。

 二次会で久しぶりにカラオケに来た。カラオケもカフェのライブを始めてからは全く来ていなかったから、こうしてゼミの仲間とルームにいるのが何だか懐かしい。

「田島、お前、歌えない曲とかないんじゃね?」
「あるよ。オペラとか絶対に無理」
「イヤーそれもできそうだな」
「田島のオペラ、聞いてみたいよな」
「おい、探すな。無理無理」

 田島はその友人からリストブックを取り上げると、以前のように自分の好みの曲を探し始めた。

「他に俺らの前で歌ってないのとかあるか?」
「あ、童謡! 歌ってないぞ」
「は? 童謡!?」

 今度は友人にブックを取り上げられた。一人が童謡のページを素早く開き、一人が今度はブックを取られないようにと田島を押さえ、一人がリモコンでナンバーを入れた。

 仲間に動きを押さえられて「離せ!」とジタバタしていた田島も、「ほらほら、始まったぞ」とマイクを持たされ、イントロが始まると真顔で観念する。

「それでは、キムタク風に歌わせていただきます!」
「童謡、あ行の上位にランクイン! 赤とんぼ!」
「ハイ。ゆふや~け、こぉやけえぇ~の・・・・」

 田島は真剣にモノマネを披露した。モノマネは結構得意で、仲間たちの間でも田島のモノマネはいつも好評なのだ。今夜も連続してモノマネを数曲披露して場を盛り上げた。

「田島は、ライブとカラオケで歌い方が全然違うな」
「カラオケはコピーだから」
「カラオケもライブみたいに歌えよ。そっちの方がかっこいいし」
「できないよ。ペースもキーも違うし。ギターも弾いていないから」
「ギターがオンとオフなのか?」
「じゃあ、今度の飲み会はギター持参で来いよ」

 気の知れた仲間たちの間で、田島は居心地の良い時間を過ごした。カラオケを出てからも「次に行こう」と誘われた。けれども、「次の日のバイトが早番で入っているから」と言って、ブーイングを受けながら家に帰った。



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 田島は経営学部でビジネスの勉強なんかをしているんですよ。意外ですかね?
 田島のものまね、聞いてみたいなあ。


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - lime  

Title - No title

私も田島のモノマネ聴いてみたいです。
モノマネの得意な人って、人間好きな、愛情豊かな人が多いですよね。
冷たい人にはモノマネってできませんもん。
田島って、そんな人なんでしょうね。

え、花園君は、デートなの?
2011.10.08 Sat 08:45
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメントありがとうございます。

ものまねって、ホント奥が深いですよね。
田島は友だちを喜ばす事が好きな、サービス精神旺盛な奴なんです。

徹さんは、彼女の三条奈美さんとデート・・・ではなく、
居酒屋のバイトが休めなかったんですって^^

ところで、田島のバイトは何?

2011.10.08 Sat 11:06
Edit | Reply |  

Name - 西幻響子  

Title - No title

私も、田島くんのキムタク風の歌、聴いてみたい!
あと、ライブの時のも…。
田島くんに似ているタレントとか、いますか?(笑)

花園くん、デート?
2011.10.08 Sat 14:26
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 西幻響子さん

コメントありがとうございます。

田島のライブは一見の価値ありますよ~。(マジ)

タレントでは・・・誰に似てもらいましょうかね(笑)
とりあえず、身長は180超(詳細不明)・・・

徹さんは奈美さんとデート・・・ではなく、
バイトなんですってば・・・(汗)
2011.10.08 Sat 17:29
Edit | Reply |  

Name - あかね  

Title - いろいろ悩み深そうですね

田島くんにはまだ隠された真実みたいなのがあるのですか?
苦悩する青年像。
そうそう、若者は悩んで大きくなるんだよ。
ですよね?

ア・カペラナイトっていうのもいいですよね。
ヴォーカルグループの歌をア・カペラでってリクエストしたいです。
田島くんは編曲も得意なのだそうですから、フォレストシンガーズの歌をソロで聴かせるようにアレンジして、ぜひ歌って下さい。
ライヴ、聴きにいきたいな。

あ、でも、この時代っていつでしょう?
フォレストシンガーズがデビューしたのは二十一世紀に入ったころだから、この時代にはまだいないのかもしれませんね。
もしもいたとしても全然売れてませんから、田島くんは知らないかな。

2012.11.22 Thu 11:59
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - Re: いろいろ悩み深そうですね

あかねさん、コメントありがとうございます。

ふふ、そうです(いや、意味は無いです --;)
えっと、過去を解放して前に進もうとする過程で、色々と想うこともあるらしい・・・

けど、まわりにいるサポーターに支えられて、何とかやっていきます。
このサポーターが強力・・・おっと、ネタバレ注意(^^;)

ア・カペラナイト、グレート・アイデアですね。
田島、フォレストシンガーズやっても良いですかね。

ヴォーカルグループはハーモニーで来ますから、ソロでやるには相当力が無いとね。
てか、共同でアレンジして、コラボで見たいかも。それはいつー?

> あ、でも、この時代っていつでしょう?
> フォレストシンガーズがデビューしたのは二十一世紀に入ったころだから、この時代にはまだいないのかもしれませんね。
> もしもいたとしても全然売れてませんから、田島くんは知らないかな。

もちろん、存じておりますとも。
時系列を合わせると、フォレストシンガーズはプロで、田島はアマチュア、というところですかね。

イメージ的には、田島よりフォレストシンガーズの方がずっと大人だなあ。
あ、体育会系トレーニングには耐えられる方かも^^
2012.11.22 Thu 15:52
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

田島君は就活はしないのですかね。
まあ、確かに音楽に生きると決めたのであれば、バイトで食いつないで音楽をやっていくしかないですからね。金がない生活が続きそうですが。。。。
田島くんの未来はどうなるのか。。。
・・・というところも着目点ですね。
(@_@;)
2016.03.12 Sat 11:17
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

はい。田島は徹さんと話して心に決めたので就活はしないのです。
今はバイトをめちゃくちゃやります。それで案外稼ぐ(^^;)

このお話は田島の近未来まで追っていきます(SFではない -_-;)
まだまだ先が長(すぎて)くて申し訳ない(汗)
2016.03.12 Sat 14:35
Edit | Reply |  

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