オリジナル小説を綴っています。 拙いものですが、少しでもお話を楽しめる憩いの場になればと。

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夢叶 25 第二章・ジャズライブ(1) 

 記録的な猛暑と言われた昨年と違って、今年の夏は例年通りという言葉が良く聞かれる。

 各地の花火大会も予定通りに行われ、学校に行くことから解放された子どもたちは、それぞれに夏休みを楽しむ。

 今日も田島は、早番でバイトを終えた。電車を降りると、駅近くの広場に夏祭りのための櫓が組まれていた。その櫓の脇を通ってカフェへの道を急ぐ。

「成ちゃんは、今年も盆踊りで太鼓を叩いているのかな」

 並んでいる屋台は、祭りの前でまだ準備中。それを横目に見ながら、田島は高校時代の夏休み、盆踊り太鼓を打つのにかり出された鏡の陣中見舞いに行ったときのことを思い出した。

 その思い出の中で高校生の田島は、焼きそばやたこ焼きなどのお祭りフードを、鏡と長谷川と3人で分け合って笑っていた。

 鏡は盆踊りで叩いた次の日は、いつもへたばってしまってバンドの練習にならなかった。「もう無理」と言って軽音部の部室の床に大の字になって転がる鏡に、文句を言うのが田島で、笑って栄養ドリンクを渡すのが長谷川だった。

 そんなことを思い出していたら、綿菓子屋の前で歩みが止まっていた。

「やばい、遅れる!」

 セミの声に押されて走り出した。

 その週のカフェライブは、ジャズ・ナイトだった。田島はリクエストの曲を含めて、ジャズのスタンダード・ナンバーと最近のナンバーの両方を何週間にもわたって練習してきた。

「田島祥吾です。ジャズは初めてなんで、緊張しているんですけど・・・一生懸命、練習してきました。聴いてください」

 花園は、ライブが始まる直前に来店した三人の若い女性と一人の年配の男性を、カウンターから近い四人がけの席に案内した。

 その三人の女性が、リクエストをくれた三姉妹だろうとマスターにはすぐに分かった。三人は、パンツルックにスカートと三者三様のファッションを身につけ、どことなく育ちの良さそうな上品さを漂わせていた。

 ライブで田島が使用するのはアコースティック・ギターなので、今日はジャズ感を出すためにピックを使わずにフィンガリングで演奏していた。そのため、ライブはいつもとは少し趣の違う、丸みのあるサウンドが流れていた。

「お誕生日、おめでとうございます」

 ライブを見ていた三姉妹は、差し出された小さな手作りケーキに驚いてマスターをに目を向けた。

「サービスです。ろうそく出しますよ。お父様、何歳のお誕生日ですか?」

 マスターが笑顔でろうそくを立て始めると、マスターと目が合った小顔で長髪の長女らしき女性が言う。

「五十一歳です」

 マスターは、大きなろうそくを五本と、小さなろうそくを一本ケーキに立てて、マッチをテーブルに置いた。三人の女性はそれぞれに「ありがとうございます」というようにマスターに頭を下げた。

 マスターは男性の年齢を聞いて、実は内心驚いていた。姉妹の父親であろうその男性は、痩せて顔色が悪く、白髪と表情の無い様子から、六十歳は軽く超えているように見えたからだ。

 今日はきっと久々の外出なのだろう。店に入ってきた時、支えられるほどではなかったけれども、その歩みはとてもゆっくりとしていた。

 姉妹の見立てか、それとも亡くなった姉妹の母親の見立てか、粋なデザインのサマー・カーデガンを羽織っている。

 けれどもその白髪の男性は、ケーキに立てられたろうそくに火がつけられても、消されても、姉妹から祝福されても、表情を変えることは一切無かった。

「次の曲は美穂さんから、お父様への誕生日リクエストです」

 普段はリクエスト依頼者の名まえなど出さないのに、なぜか田島はそう紹介してから次の曲を始めた。

「うわっ。すみません、もう一度やります」

 珍しく出だしで音をはずした。今まで田島は、ライブでミスをすることはほとんど無い。けれどもいつもと違って、普段はあまりやらないフィンガー・ピッキングで演奏しているからか、指が走った。

 田島がミスをした時、テーブルに座っていた姉妹の父親がそれまで伏せていた目を少し開き、顔を上げたのをマスターは見た。

 姉妹たちはそれに気づいているのかいないのか、曲をやり直した後の田島の歌うリズムに合わせて、組んだ足を揺らし、指をクリックさせていた。

「ふ~、今日は俺、腕がつりそうです」

 リクエスト曲を弾き終わった後、田島はギターから手を離してぶらぶらさせたり、手首をぐるぐる回したりしながら間を取った。

 今日やっているジャズは、初めてということもあり、練習に時間をかけた。曲はギターの曲ではないものが多かったから、ギター用にアレンジする必要があった。特に姉妹からのリクエストは原曲をギターで忠実に再現することに注意した。

 練習は大変だったけれども、それは客に聞かせるライブとしてきちんと仕上がっていた。いつもながらの見事な演奏と歌に、客は多少のミスなど取り上げずに盛り上がっていた。



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 高校時代の夏休み。思い出はやっぱりバンド絡みの田島です。
 ちょいミスがあっても、ジャズのライブは順調なようです。
 けど、このお父さんは・・・?

 ところで。

 いやー、描写・・・(-_-;) 難しいですね(汗)
 マスターなんか、どんな人なんですかね(自分で散々書いておいて・・・><)
 次回は、田島がしゃべるのですが、どんな顔してしゃべるん??
 まだまだ物書き修行中(滝汗)


 『夢叶』に、ご意見、ご感想、ご助言等いただけると嬉しいです。

 読んでいただき、ありがとうございます。皆様の一日が平和でありますように。

 Have a nice day!
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Comment

Name - 西幻響子  

Title - No title

うわっ、田島くん少し緊張したのかな??
でもカフェでジャズ、いいですよね~。
久々にジャズが聴きたくなりました。
お父さん、田島くんの演奏を聴いて、なにか心に響けばいいんですけど…。

描写のこと、けいさんが努力している姿が今回の文章でうかがえて、とてもほほえましいです。私もがんばらなきゃ、と思いました。

マスターも田島くんも、今までの物語で性格が把握できていたので、ぼんやりとですが外見も頭の中にうかんでいました(けいさん、会話の書きかたにリアリティを感じさせるので、それで読んでるほうは、性格が把握しやすいのかも)。

もし外見を書くのでしたら、髪型とか目の感じ(たれてるのか、つりあがつてるのか、小さいのか、大きいのか、鋭いのか、優しげなのか、など…)とか、体型とかを簡単に書くことからしてみたらいかがかなーと思います。

でもこれはあくまで西幻のやり方なので、けいさんのやりやすいように、やりたいように書いていくのが良いと思います ^^
2011.10.14 Fri 15:03
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 西幻響子さん

コメント・アンド・アドバイスありがとうございます!

私もジャズが聴きたくなりました(笑)
田島はお父さんに何を与えられるのでしょうかね。

今回のちょい頑張りにほほえんでいただき、ありがとうございます(照)

マスターなんか、名まえさえ未だにないんですよ。
こんなにお世話になっているのに・・・
もー、マスターごめん・・・

はい、外見が一番大変です。首から上がぁ・・・
これからも少しづつキャラが増えてくるので、
またそのときに色々試してみます。

西幻さん、アドバイスを本当にありがとうございます。
これからも精進していきますので、
また何かありましたら教えてくださいね^^
2011.10.14 Fri 18:24
Edit | Reply |  

Name - 秋沙   

Title - No title

うお~~~緊張するねぇ田島君。
なんか私まで、右の手首が痛くなるぅ(>_<")
(実は、フィンガーピッキングがまったくもってできない秋沙でした)

このジャズが好きなお父さんに、田島の歌がどう響いていくのか・・・
気になりますね。
音楽の力を信じたい!


けいさんの文章は、とっても読みやすいですよ。
人物のルックスの描写・・・?
それは、必ずしも必要なものではないって、私は考えていますよ。
ある程度読者様の好きなように想像してもらっていいんじゃないかな、と。
ただし、その人物を表すために必要な部分に関しては、手を抜かないようにするのが効果的なんじゃないかと。
書いているけいさん自身が、「このキャラはこういう人物なんです!」と主張したい部分があるのなら、それを表すのが例えば服装だったり、身のこなしだったり、目付きや表情だったり、いろいろあると思うんですが、こだわりたい部分だけに絞ってもいいのでは(^^)。
田島くんに関しては、これまでの会話だけで人柄が伝わっているし、今は「昔はテレビで名の売れたミュージシャンだった」ということがわからないくらいになっている・・・という描写だけで、勝手に平均的な大学生の若者を想像してましたよ(^^)


名前だって同じです。マスターはマスターのままでも、じゅうぶんだと思いますよ。
田島達登場人物にとって、この人はやっぱり「マスター」なのだし、こうやってマメマメと田島のライブの世話をしてくれているという行動だけで、じゅうぶんに人柄もわかるし。



・・・・なんて、私ごときが小説の書き方を講釈できるはずもなく・・・(^^;)
長々と失礼しました~~~~。
2011.10.14 Fri 22:22
Edit | Reply |  

Name - lime  

Title - No title

田島君、いつになく緊張してるのが伝わってきます。
でも、アレンジも演奏も、やはりぬかりないのが嬉しいですね。

この姉妹とお父さんの存在感が、今回とてもしっかりと浮き上がっていて、ぐっときました。
そこにリアリティがあると、物語全体がしっかりしてきますもんね^^

私も、アドバイスなんてできる立場ではないんですが^^
そうですね、・・・顔や造形の描写は、その人の心の描写や、会話でしっかり印象づけた後で、誰か第三者の目を通して、サラッと書きあげた方が自然かもしれません。
ある程度の体型や、年齢が分かったら、あとはその性格から、じわ~~っと読者に組み立てて行ってもらった方がいいかもしれません。
(なんちゃって、私は主人公に関しては、結構細かく描写してしまうんですが^^;)

一つだけ気になったことがあるんです。
夏祭りの準備中の屋外から、ライブのステージにポンと場面展開したあとの展開が、少し急だったような印象をうけました。
ステージが始まるまでの、田島君の内面がもう少し描写されていたら、読者の緊張感も更に田島君と同調できるような気がします。
けれど、マスター目線や、花園目線だとしたら・・・難しいですよね。

・・っと、こんなことを書きながら、自分も勉強になります^^
書き方に正解はないですもん。
おたがい、模索していきましょう~。
2011.10.15 Sat 03:11
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - 秋沙さん

コメント・アンド・アドバイスありがとうございます!

私も! 音楽の力を信じたい!
お父さんの心に響いて欲しいところです。どうなるのか・・・

秋沙さんに文章読みやすいと褒めていただき、
めっちゃ喜んでます^^

これからもポイントは手抜かずに(汗)頑張ります。
実はこだわりっていう部分も・・・課題です。。。

田島は基本、平均的な大学生の若者、その通りなんです。
普通の大学生が夢を追うっていうのから始まったはずが、
いまこんなんです、みたいな・・・はは・・

マスターは初登場の時から名前を、と考え続け、未だに・・・
いや、考えていますよ。
今は人柄が先行しているのでそれに見合うかっこ良いのを(?)いつか公開の予定(笑)

秋沙さんのご講釈、ありがとうございました。
またよろしくお願いします。

秋沙さんの演奏も、いつか聞かせてくださいね^^
2011.10.15 Sat 11:17
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - limeさん

コメント・アンド・アドバイスありがとうございます!

田島はライブに関してはぬかりないです。
好きなことをやる時はきっちりするんですよね。

今回のライブと姉妹とお父さんの絡みがこのエピソードのポイントなのですが・・・
リアリティですか・・・頑張ります(汗)

limeさん! 気になっていただき、ありがとうございます。
こういうのを待ってました(笑)
ステージ前の悶々って、あるはずですよね。
いやー、今の私には描けませんが、
いつかこのお話を手直しなんて事ができるようになったら
この場面をもう一度見直します。
今は、無理ぃ~、って、床に大の字の成ちゃん目線で・・・(汗)

すっごくいろいろと参考になりました。

> 書き方に正解はないですもん。

そうですね。ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします^^
2011.10.15 Sat 11:56
Edit | Reply |  

Name - ansheen  

Title - No title

いつもご訪問とあたたかなコメントありがとうございます。
まだ、ブログ自体に慣れていないものですからコメントが遅くなりがちなのをご容赦ください。

田島君の演奏、うまくいって良かったです。
ジャズはわたしは良く知らないので分かりませんが
煙草をふかしながら自然にからだがノル感じを連想していました。

また遊びにきますね。
2011.10.15 Sat 22:39
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - ansheenさん

こちらこそ、ご訪問とあたたかなコメントありがとうございます。

ansheenさんのブログはとても素敵でみんなに宣伝したいくらいです。

ジャズは・・・私も実はよくわかっていなく・・・
妄想しつつ、楽しんでいます(笑)

煙草をふかしながら聴くあの曲・・・(どの曲?)
そんなシーンも、良いですね。

是非また遊びにいらしてください^^
2011.10.16 Sun 08:28
Edit | Reply |  

Name - LandM  

Title - No title

色々思い入れがある曲なのかな。
リクエスト主の反応が気になるところですね。

ジャズは私も喫茶店で何度か聞いておりますけど。
あれは良いですよね。
風情があります。
後は近くで聞けるので音の振動を肌で感じるのが私は好きですね。
(*''ω''*)
2016.03.26 Sat 12:30
Edit | Reply |  

Name - けい  

Title - LandMさん

コメントありがとうございます。

リクエスト主には色々思い入れがある曲のようです(?)

ジャズも良いですよね~
私はジャズはピアノがとても好きなのです。
ノリが独特で、違う世界に行っちゃう感じがするんです。
うん。ライブが良いですよね~^^
2016.03.26 Sat 17:26
Edit | Reply |  

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